昔、一緒にやっていたメンバーの口癖が
「最高だな」だった。
「最高だな」が口癖だけど私生活は不条理な状況に
巻き込まれたり、泣き言が多かったり、困窮があったり
はたから見ると決して「最高だな」とは言えない状況の人だったが
一緒にやる音楽は「最高だな」でお互い腹の底から楽しめた。
最後に一緒にやってからは何年経ったかな。
先日の教室のイベントで弾いていた時にふとその感覚が
やってきた。嬉しかった。やっと生徒と対峙し融合できるレベルまで
自分が成長できた気がした。
上手くなるとはどういう事なんだろう。
それは自分で考えて欲しいし
見つけて欲しい。
問い方を変えれば上手くなるためには何をすればいいのだろう?
それも自分で考えて欲しい
見つけて欲しい。
何にせよその問いを持ったらそれを抱き続けて
歩み続けるしかない。
技術にこだわってもいいし
理論にこだわってもいい
手あたり次第触発されて曲をあさってもいいし
一曲に腰を据えてコツコツとやるのもいい
作品を作るのはもっとも勉強になる
各々進みやすい道を進めばいい。
進みやすい道が個々に違う事も知ればいい。
問い続けて、現われを観察していくうちに
今までに感じたことがない調和を味わう時が
来ると思う。
その時に新たに音楽と出会う。
今までと全然違う。
ほんの少しの違いだけど
いままで何も分かっていなかったと知るぐらい
全然違う。
ほんの少しの違いが全然違う事が分かると
取り組み方も変わってくる。
教室には学びに来たり、習いに来たりしている方々
自己表現に来ている方々色々いるけれど
どのスタンスでも良いと思う。
どんなスタンスの方にもレッスン中に
「ちょっとの全然違う」に触れた瞬間
が起こったのを見かける。
それは自覚されていない事も多い。
そうなった時に急に演奏がよれたり、弾くものが分からなくなる
事もある。でも楽しそうだ。
僕は触れる事を入り口に探求してきた。
触れ方や動きの可能性を探っていく中で
段々と「ちょっとの全然違う」感覚の中を進んでいった。
その中で見つけてきたことは
一応、知って欲しい事としてその中で
お伝えするようにしている。
それが理解しやすい人も
理解しにくい人もいる。
それはそれぞれの歩みやすい道を進んで下さればいいと思う。
大切なのはそういう事を知ってもらう事ではなく
自分が出す音が対峙し融合している事だ。
通ってきた道も大切だがもっと大事なのは
今存在している自分。
それは、僕だだけの事ではなく
皆さんも同じこと。
様々な道を経てきて今教室で向き合って音をだしている。
それが一番大切で味わう事。
それが自分を楽しむことだし
相手を楽しむこと。
それが一番の学びにも養分にもなる。
身に着けたり削ぎ落したりしながら歩んで
今がある。
どこかに行ってしまっていては勿体ない。
楽しみも上達も今の中にある。
過去のどんな最高点よりも今が最高だと自己を捉えなおせれば幸いだ。